富士登山のルールとマナー
富士山と山麓の大部分は、富士箱根伊豆国立公園(昭和11年)、世界文化遺産(平成25年)、特別名勝(昭和27年)及び史跡(平成23年)に指定されています。また、溶岩洞穴や溶岩樹型などの天然記念物や多くの史跡もあります。このような貴重な自然や歴史的資源を大切にすることが重要です。
特に、五合目より上は国立公園特別保護地区に指定され、自然保護のため厳しい規制がかけられています。
法律で禁止されている行為
国立公園特別保護地区内及び特別名勝指定区域では、登山者に関わる行為として下記が禁止されています。(自然公園法第21条第3項、文化財保護法)
動植物の採取禁止
花や実を採ったり、昆虫採集などもできません。
登山道を外れて歩くと貴重な生態系に影響を及ぼすため、登山道以外は歩かないようお願いします。
溶岩や石の持ち出し禁止
小石を持ち帰ることはもちろんのこと、移動も禁止です。
落書きの禁止
建造物はもちろんのこと、岩・石への落書きも禁止です。
テント設営やたき火の禁止
富士山にはテントサイトがありません。宿泊は、山小屋でお願いします。
たき火は禁止されています。
バーナーやコンロは、火災を起こすおそれがあるため、山小屋周辺や人ごみを避け、周囲に注意して使用するようにしましょう。
ペット等の放し飼い禁止
特別保護地区内では、動物を放すことが禁じられています。
山小屋内にペットを入れることやペット連れの登山は、原則としてご遠慮ください。
富士山の登山道は火山砂利のため、ペットとともに登山するとペットの足にダメージを与える可能性があります。
富士山憲章と富士山カントリーコード
富士山では、環境保全を目的として「富士山憲章」を制定し、利用のルールとして「富士山カントリーコード」を定めています。
富士山憲章
富士山憲章 制定の過程
山梨・静岡の両県は、平成8年に「富士山クリーン作戦」共同実施の成果及び両県知事によるテレビ対談での取組の提案、平成9年には、「富士山環境保全共同宣言」の発表及び「富士山サミット」の開催により、「富士山はひとつ」の共通認識のもと、両県が連携して富士山の環境保全に取り組むことを確認しました。
平成10年には、日本のシンボルである富士山を世界に誇る山として、後世に継承するための全国的運動の原点となる「富士山憲章」を制定しました。
富士山憲章 本文
富士山は、その雄大さ、気高さにより、古くから人々に深い感銘を与え、「心のふるさと」として親しまれ、愛されてきた山です。
富士山は、多様な自然の豊かさとともに、原生林をはじめ貴重な動植物の分布など、学術的にも高い価値を持っています。
富士山は、私たちにとって、美しい景観や豊富な地下水などの恵みをもたらしています。この恵みは、特色ある地域社会を形成し、潤いに満ちた文化を育んできました。
しかし、自然に対する過度の利用や社会経済活動などの人々の営みは、富士山の自然環境に様々な影響を及ぼしています。富士山の貴重な自然は、一度壊れると復元することは非常に困難です。
富士山は、自然、景観、歴史・文化のどれひとつをとっても、人間社会を写し出す鏡であり、富士山と人との共生は、私たちの最も重要な課題です。私たちは、今を生きる人々だけでなく、未来の子供たちのため、その自然環境の保全に取り組んでいきます。
今こそ、私たちは、富士山を愛する多くの人々の思いを結集し、保護と適正な利用のもとに、富士山を国民の財産として、世界に誇る日本のシンボルとして、後世に引き継いでいくことを決意します。
よって、静岡・山梨両県は、ここに富士山憲章を定めます。
- 1. 富士山の自然を学び、親しみ、豊かな恵みに感謝しよう。
- 1. 富士山の美しい自然を大切に守り、豊かな文化を育もう。
- 1. 富士山の自然環境への負荷を減らし、人との共生を図ろう。
- 1. 富士山の環境保全のために、一人ひとりが積極的に行動しよう。
- 1. 富士山の自然、景観、歴史・文化を後世に末長く継承しよう。
富士山カントリーコード
美しい富士山を後世に引き継ぐ
車道外へ車両などを乗り入れない
駐車場ではアイドリングをしない
動植物を採らない
ゴミは絶対捨てずに、すべて持ち帰る
ゴミになるものを最初から持っていかない
登山道を外れて歩かない
登頂記念の落書きをしない
溶岩樹型塘の特殊地形を壊さない
トイレなどの公共施設をきれいに使う
登山のマナー
富士山カントリーコードで示されたルール以外に、富士山でも一般的な登山マナーの遵守をお願いします。
登山道は登りが優先
山開き直後の7月上旬など、残雪があり下山道が開通できない場合、ルートの上部は、登山道と下山道が同一となっています。狭い登山道では原則として登りを優先し、互いに譲り合いにご協力ください。
登山道ですれ違う場合には、「こんにちは!」「ありがとう!」と声を掛け合いましょう。そうすることで、同行している人の体調確認もできます。
無理な追い越しはしない
混雑するシーズンには、山頂直下で登山道が渋滞する場合があります。
先を急いで無理に追い越そうとすると登山道をはずれ、特に夜間は転倒や落石の原因ともなるため大変危険です。
無理な追い越しはしないようにしましょう。
落石を起こさない。落石を起こしたら大声でまわりに知らせる
登山道の端を歩くと、小石が落下しやすくなります。できるだけ、登山道の内側(山側)を歩くようにしましょう。自分が落石を起こしてしまった場合には、いち早く、周囲の人に大声で「落石!」を叫んで知らせてください。
また、落石危険箇所(落石注意の看板のある箇所)では休憩しないようにしましょう。
ケガ人や助けを求めている人がいたら、救助に協力する
緊急の場合には、互いに助け合うことが大事です。山小屋への連絡や応急措置など、協力しあうことで大事に至らずに済むこともあります。
ストックの先端にはキャップ(石突)をつけましょう。
キャップをはずして使用すると、登山道を痛め、崩落にもつながります。尖った先端が周囲の人への凶器になる可能性があります。
小屋前で休憩する場合は、出来るだけ静かに
夜間の小屋の中では、睡眠を取って休んでいる人が大勢います。
小屋前での休憩は騒がないようにしましょう。
鳥獣の巣を見ても、近づいてはいけません。
富士山五合目より上は鳥獣保護区内です。鳥獣の生息、繁殖に影響を与えないよう、巣を見つけても近づかないようにしましょう。